
カウンセリングサービスの成宮千織です。いつもありがとうございます。
心理学に『投影』という用語があります。自分の嫌な感情を感じたくなかったり、認めることができないときに、まるで相手がその感情を感じているように感じることです。これは防衛機制のひとつです。
こんな嫌なものは自分のものではありません、あなたのものですよと相手にそれがあるかのようにしてしまうのです。
自分のなかに怒りがあり、それをありのままに感じることができないと、目の前の人が自分に攻撃をしてくるように感じることがあります。店員の不愛想な対応が自分に悪意をもっているのではないかと過剰な怒りを感じるなんてことがあります。
無意識ですので、自分ではなかなか気づくことができません。そして、それが事実と信じ込んでしまっているため、被害者意識のまま、出会う人出会う人とトラブルが起きてしまうなんてことがあるのです。
パートナーに尽くし過ぎる人は、本当は自分自身のなかに「~してほしい」というニーズがたくさんある場合があります。それもありのままの自分のニーズを拒否したり、感情的に受け入れることができないと、まるでパートナーに「~してほしい」とゆうニーズがあるように感じてしまうのですね。でもパートナーはそのニーズはないので、尽しても重く感じられてしまうのです。
『投影性同一視』というものは、もっと厄介で、投影にとどまらず、自分に嫌悪感を抱いてなかった相手が、本当に自分を嫌悪してくるという現象を引き起こしてしまうのです。
父親自身に不安があり、それを自分自身で認めることができないと、子どもに不安があるかのように感じてしまうことがあります。子どもがビクビクしているように感じ、「もっと堂々としろ」「男らしくしろ」などと子どもに怒ってばかりいると、やがて子どもはおどおどとした本当に不安の強い子どもになってしまうことがあります。
自分自身を嫌っていて、それを抑圧し相手に投影すると、相手が自分を嫌っているように感じます。嫌いな人には優しくしたり親切にはしたくないので、言動は冷たくなってしまうものです。すると、あなたから理由もなく冷たくされれば、相手もあなたに良い感情はもちませんね。相手もだんだんとあなたに冷たくなっていきます。すると、「あいつはやっぱり嫌なやつだ!」となるのです。もともとその人はあなたを嫌っていなかったかもしれません。でもあなたから冷たくされて、あなたにとって本当に嫌な人になっていったのです。
投影性同一視は日常にとても多くあることです。
+
人が怖いという人が世の中にたくさんいます。アダルトチルドレンは特に人が怖いといいます。アダルトチルドレンは子どもの頃の環境が過酷でネガティブな感情が内側に蓄積されやすいのです。それは膨大な怒りや憎しみがたまっているからなのです。
なぜ怒りや憎しみがたまっていると、人が怖くなるのでしょう?先ほどの投影の法則を思いだしていくと、自分には怒りと憎しみがある。しかしそれを感じることができないと、他者に投影しやすくなります。投影すれば、他者が自分に怒りや憎しみを向けてくると感じてしまいますので、人が怖くなるのは当然ですね。
人はストレスや寝不足など体調がすぐれないときに、より投影が起こっているようなのです。日頃から自分の体調管理と、体調の変化を観察しておくのは良いことですね。
+
アダルトチルドレンの特徴として、間違っていても自分が正しいと本気で思い込んでしまう、人は自分に良くするべきだ、相手の立場になって考えることが苦手、依存心が強いなど、できればそれに気づいて改善したい要素があると思うのです。それが生きにくさになっているので、もしかしたら自分もそんな部分があるかもしれないと一度振り返ってみるといいかもしれません。
それは、幼少期からの過酷な家庭環境などから形成された考え方の癖なので、あなたが悪いわけではありません。親に守ってもらえる環境ではなかったら、過度な自己防衛が必要となります。本来の自分の感情や欲求を無視されたら、本心で生きることが難しくなります。怒ることも許されない、泣くと怒られる、そんな環境で育てばありのままの自分の感情を抑圧しながら生きていくことになります。
また、子どもが親に甘える時期に、甘えることができなければ、例えばパートナーができたときにそのニーズがあふれ出てくるケースが多いのです。親をパートナーに映し出しているからなのですね。これも投影のひとつです。本当にほしいものは子ども時代の親の無償の愛なので、パートナーにそれを求めても無理があるのですね。パートナーはあなたの親ではないからなのです。頭ではわかっても、これは無意識なので愛を求める欲求は際限がありません。
+
あんな過酷な環境で、今までよく生き延びてこられたと思いませんか?あなたは本当にすごい人なのです!私はこの生きづらさは心の後遺症だと思っています。事故などで負った体の後遺症ってなかなか治らないっていいますよね。心も簡単には回復しないと思うのです。でも、あきらめなければ少しずついい方向に向いていくと思います。それはカウンセラーである私たちがたくさんの人たちの人生をみてきたからなのです。多くの方が苦しみから徐々に開放されて、生きやすくなっています。
まずは、誰かとトラブルになったときに、絶対に自分が正しいと思ったとしても、もしかしたらそれは間違っているかもしれない。そう疑ってみてはどうでしょう?人に話す必要もありません。心のなかでそっと考えるのです。それができたら、相手側の視点になって物事を考えてみる。
気づくだけでも半分以上は克服できていると思うのです。それくらい受け入れられなかったことだと思います。


