心理カウンセラーの成宮千織です。
人間関係を良くするにはどんなコミュニケーションの方法を考えると、私がすぐに思いつくのは、ありきたりですが人を褒めたり、認めたりするのがいいんじゃないかな?と思います。
でも日常的にそれをしているとちょっと疲れますね。やりすぎてしまうと、こびてる感じもして微妙な空気が流れてしまうこともあります。また褒められることがどこか居心地悪く感じる人や、関係性においてはちょっと失礼な場合もありますよね。
では褒める、認める以外に人間関係を良くするコミュニケーションはないかな?と考えて、「否定しないコミュニケーション」はどうかなと思い、今回のテーマにしました。
悪気のない否定
誰でも大切な人のことを否定ばかりするよりも、できれば肯定したい、受け入れたいと思っていると思うのです。でも考え方やとらえ方は人それぞれ違いますし、あきらかに相手の言っていることが間違っていることもあるので、「でも」「だって」から始まる否定の言葉をつかってしまうこともよくあることだと思います。
それはもちろん悪いことではないのですが、「あなたは間違っている!」と否定しても、あなたに「教えてくれてありがとう♪」とはなかなかいかないものです。人は正論を言われると傷つくこともあります。
それにですね、「でも」「だって」の否定はわかりやすいのですが、実はもっと厄介な否定があるのです。それは無意識にしている否定の心理状態です。否定という言葉の概念とは外れるかもしれませんが、感情的に相手が受け取る否定ととらえてくださいね。
相手の話を聞かない(適当に聞く)
話を遮る
話を横取りする
話をなかったことにする
自分の思う方向に誘導する など
これらは、言っている人に悪気がないことが多いんですね。
「あなたのためを思って」の否定
「アイドルになりたい」と子どもが言うと「アイドルなんて簡単になれないわよ。それよりも勉強を頑張って、お給料のいい会社に就職するのはどうかしら?」とお母さん。叶うことが難しい夢ではなく、もっと現実的な目標を持って欲しい、堅実な人生を歩んで欲しいという親心なんですが、子どもの夢ははかなくもつぶれてしまいます。
悪意がなく、否定を肯定している場合はちょっと厄介なんですね。そんな私自身も息子に「あなたのためを思って…」はよくやっていました。親は子どもよりも多くのことを経験しているので、視野も広いし、視座も高く物事を見ることができるので、転ばぬ先の杖となって危険を避けようとするのです。愛情の裏返しなんですね。
いいことのようにも思えますが、否定された側は、話さなくなる、自信がなくなる、自己肯定感が下がる、怒りを感じる、信頼できなくなる、すねる…、こんなことが心の中で起こっているのです。
私は中学生のころ、母に「心理学を学べる大学に行きたい」と話したことがありました。母「…。」私の母は、自分の気に入らないことや同意できないことに対しては昔から無言になるんです。私の気持ちをわかってくれない母に怒りが出てきました。
進路相談の時に、それを担任の先生に話したら、「いいんじゃないかしら!」と賛成してくれたんです。私はてっきりまた反対されると思っていたので驚きました。とっても嬉しくて、飛び上がりたいくらいでした。
でも、それと同時に気づいたこともあったんです。心理学を学んでどうするんだろう?私は当時何も考えておらず、ただ何となく面白そうとしか思っていなかったのです。私の家は残念ながら面白そうだけで大学に通えるほど経済的に余裕がなかったので、その思いはスッとなくなり、違う道に進むことになったんです。
一旦、気持ちや思いを誰かに受け止めてもらえると、それだけでホッと安心して冷静に考えることができることがあります。
結局、私は大人になってからも、ずっと心理学に興味があったので、カウンセラーを目指すことになったのですが、当時の選択は間違ってなかったと思います。
無意識に否定してる心理状態はなかなか気づかないので、「もしも、これが否定だとしたら?」という視点で振り返ってみるのもいいかもしれません。
自分が否定しているかどうか、相手の反応を見ているとわかることがあります。「違うわよ」と言葉で言い返えされる場合もありますが、言葉以外の非言語、例えば表情がくもる、言葉が少なくなる、機嫌が悪くなる、気がそれるなど、ちょっとした変化を読み取ることもできますよね。
否定しないコミュニケーションの効果は、
信頼関係ができる
自己肯定感が上がりやすくなる
人間関係のトラブルが減る
などです。
もしも相手が否定してきたら?
自分は否定しないけど、もしも相手が否定してきたら?
相手の言葉は全部受け入れなくていいと思うのですが、人間は反射、反応してしまうので、なかなかできませんよね。でも、こんなイメージの練習をしてみたらどうでしょうか?
心の中にザルがあると思ってください。相手の否定の言葉をザルに通すのです。自分に取って必要な言葉はボールに受ける。(相手の心の中には、ザルはないというのも覚えておくといいと思います。)
否定しないコミュニケーション意識してみてはどうでしょうか?近い関係性ほど、否定したくなります。それは、相手にこうなって欲しい、自分の気持ちをわかって欲しいという期待が大きいからなんです。それだけ自分にとって重要な人ともいえるんですね。