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成宮千織(なるみやちおり)
心理カウンセラー
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◆カウンセラーコラム「両親と京都旅行」

いつもありがとうございます。成宮千織です。本日はカウンセリングサービスのカウンセラーコラムの掲載分となります。

母を許してから、母との距離がどんどん近づいていきました。許して良かったと思ったことは、気を張らなくていいということでしょうか?楽なんですね。

ヘンな例えですが(笑)、身に着けている下着、小さすぎてサイズが合わないと気になって仕方がないじゃないですか。キツイな~って常に不快感です。

でも、ジャストフィットの下着にとりかえると、下着のことなんてすっかり忘れてしまう。そんな感じなんです。

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私は先月、遅い夏休みをとって名古屋の実家に帰省しました。なんの予定も入れず、家でのんびり過ごしていましたが、中1の姪が「金閣寺に行きたい!」と言いだし、急きょ京都に行くことになりました。

普段なら「そんな急には無理だよ~」と、姪に言って話は終わるところでしたが、今回は少し状況が違っていました。それは、夏に手術をした母の病状が思わしくなく、姪の持病も悪化しているようで、実家の雰囲気が暗く沈んでいたのです。

「旅行に行ったら、みんな前向きになれるかもしれないね」そんな願いを込めて、思いきって両親、妹、姪そして私の5人で12日の旅行に行くことにしたのです。

それから急いでホテルを探し、それぞれが手際よく準備をして出かけたまでは良かったのですが、年老いた両親には慣れないことの連続でとても大変な様子でした。

何十年ぶりに乗る新幹線は自動改札機でとまどい、バスの乗り降り、ホテルの部屋の使い方など、ささいなことでも娘たちのサポートが必要になっていました。

父は、父親としてのリーダーシップを発揮したい思いと、孫を守る優しい気持ちがありながらも、昔のように動けないもどかしさを感じているようでした。

私は私で、頼りがいのあった父が今は誰よりも弱々しく、私たちの後をついて歩く姿に、とても悲しく寂しい気持ちになりました。そんな父を見ているうちに、父にふつふつと怒りの感情がわいていることに気づいたのです。

 怒りは第二次感情といいます。私の本当の気持ちは第一次感情にありました。それは「お父さん、私の悲しさ寂しさをわかってよ!お父さんがしっかりしてくれないと私が困るじゃない()」わかって欲しい、助けて欲しい、愛して欲しい…それが私の素直な気持ちだったのです。

しかし、そんな子どものような気持ち、気恥ずかしくて感じたくありませんから「こんな感情はいらない!」と、無意識に怒りで蓋をしようとしたのです。

私は父に素直な気持ちを伝えることはしませんでしたが、怒りがわいて来るたびに、それらを自分で見つけて認めていきました。「そうだよね、寂しいよね」

どんどん認めていくうちに私の怒りは出て来なくなりました。ただ今、目の前の父に私ができることはないか、それだけを考えられるようになったのです。

旅行の話しに戻りますね。ホテルの部屋割りは、両親と私、妹と姪のふたつの部屋にわかれました。「最後に3人で寝たのはいつだろう?」と、私は両親が寝てから考えていました。

 下に弟が産まれてから、私は祖母の部屋で寝起きをしていたようなので、最後は多分2歳になる頃です。記憶をたどっても、母と手を繋いだ記憶も抱っこされた記憶もありません。

 寂しい幼少期。私は数年前まで両親に怒りを感じて生きてきました。特に母には恨みさえ感じていました。それが今、父と母は私の横で静かな寝息を立てて眠っています。「これは現実?」

 とても不思議な光景に感じられました。記憶にはないけれど、少なくとも私は2歳になるまでは両親とこうして寝ていたんだよな。そう思うとあたたかい光に包まれたような安心感がうまれ、やがて私も眠りにつきました。

翌朝、私は急用で先に実家に戻ることになりました。母は私が帰ることで、無事に旅行が続けられるだろうかと、口には出しませんがとても不安そうな顔をしていました。そんな顔をする母を不憫に思い、私はそのまま京都に残ることにしたのです。

 それを母に伝えると、母が思わず私の腕をつかみ、「行こうよ!一緒に行こうよ!」と言うのです。はじめて触れた母の手の感触でした。ゴツゴツと歳をとった老人の小さな細い手、私はこの母の手を一生忘れないと思いました。

 短い旅行でしたが、私は両親をサポートしたことで、これまでの心理的な子どものポジションから、大人のポジションに変われたと思います。そして、両親と私の3人の時間。たくさんは難しいかもしれませんが、これからも作っていきたいと思います。